飲料水源となっている湖沼やダム湖において、富栄養化に伴う藻類の異常増殖により飲料水への影響が大きく懸念され世界的問題となっている。有害物質生成藻類の問題については、古くより研究されてきている。しかしながら、有害物質生成藻類増殖や有害物質生産の原因となる因子は明確に特定されていないのが現状であり、依然として、日本国内および世界各国で有害物質生成藻類の問題は解決されていない。また、従来藻類の分析は検鏡によっており、手間と熟練を要するのが現状である。同一種であっても、形態や生産化合物が異なる場合があり、新たな分類手法や分析手法が求められている。そこで本年度は、有害物質生成藻類の培養を行いながら、分子生物学的手法による有害物質生成藻類の測定技術の開発を行った。有害物質生成藻類の中でも最もよく知られているMicrocystis属のうち有毒種として国立環境研究所微生物系統保存施設の保存株(NIES-102)を利用し、無菌下で培養した。そして、細胞数などの分析に加えて、ELISA法による生成班Microcystin濃度の測定、およびMicrocystin生成に関わる遺伝子をターゲットとしたリアルタイムPCR法による測定も行った。温度や培地濃度を変化させたいくつかの条件下で、相関関係が示され、本手法の有用性が示された。分子生物学的手法による分析手法を確立することで、例えば従来の種属の分類ではなく、有害物質生成に関わる遺伝子群の観点からの新たな分類が可能になることが期待できる。また、アオコの発生時期には、京都市の広沢池での現地調査を行った。一般的な水質項目に加えて、開発したリアルタイムPCR法による測定技技術について、現場への適用性が確認された。
|