飲料水源となっている湖沼やダム湖において、富栄養化に伴う藻類の異常増殖により飲料水への影響が大きく懸念され世界的問題となっている。しかしながら、有害物質生成藻類増殖や有害物質生産の原因となる因子は明確に特定されていないのが現状である。同一種であっても、形態や生産化合物が異なる場合があり、新たな分類手法や分析手法が求められている。そこで、有害物質生成藻類の培養を行いながら、分子生物学的手法による有害物質生成藻類の測定技術の開発を行った。 有害物質生成藻類の中でも最もよく知られているMicrocystis属のうち有毒種として国立環境研究所微生物系統保存施設の保存株(NIES-102)を利用し、無菌下で培養した。培養条件としての温度や栄養塩濃度がミクロシスチン生成藍藻類の成長およびミクロシスチン生成特性に及ぼす影響を考察した。増殖速度は、栄養塩類濃度が豊富である時に、25℃の温度条件下で最も速いこと、ミクロシスチン生成能力は同じ栄養塩濃度下では33℃までは温度が高い程高いこと、またミクロシスチン生成は、栄養塩および細胞濃度が高く、高温度である時に最も活発であることが示された。 広沢池の現地調査の結果からは、ミクロシスチン小クロロフィルa比は、夏季で特にミクロシスチン生成Microcystisの濃度が高く安定的にアオコが維持される時に高かった。アオコの毒性を予測する上では従来のクロロフィルa濃度だけでは不十分で、アオコの成長状況を考慮する必要性が示された。環境条件がミクロシスチン生成藍藻類の成長およびミクロシスチン生成特性に及ぼす影響を検討し、アンモニアがミクロシスチン生成藍藻類の成長を促進しミクロシスチン濃度を増加させること、リンの影響は少ないことなどが示された。
|