研究概要 |
前年度に引き続き, 水道水中で再増殖した従属栄養細菌を対象として, 定量方の迅速化に関する検討を加えた。モデル微生物として, Pseudomonas fluorescens P17株ならびにAquaspillirum sp. NOX株を使用し, 前年度決定したブロモデオキシウリジン(BrdU)ラベリング反応条件(R2A液体培地中で20℃, 5時間培養)を用いて, 培養中に新たに合成されたDNAをBrdUにより標識した。培養後の微生物細胞をマイクロプレートウェルに固定化し, 細胞溶解およびDNA変性処理を経た後, 抗原抗体反応によりBrdU標識DNAの定量を行った。この際にペルオキシダーゼ基質としてABTSを用いたところ, 測定日ごとにバックグラウンド値が大きく変動することが確認された。そこで, 測定値の安定化を目的として, ネガティブコントロール試料の設定方法を検討した。 その結果, 滅菌R2A液体培地(植種なし)について, 同様の手法でBraUラベル化からBrdU標識DNA定量までの一連の操作を行い, その値を各測定値から差し引くことで測定回ごとの変動を抑制することができた。 さらに, 実際の給水栓水を対象として, 残留塩素中和後に再増殖した従属栄養細菌数を経時的に測定するとともに, BrdUラベル化反応を適用して, 従属栄養細菌数とBrdU標識DNA量との間に一定の関係性を見出した。また, 残留塩素中和後にはほぼすべての試料で微生物再増殖が認められ, その比増殖速度は急速ろ過プロセス水配水区域で0. 056(hr^<-1>)以上, 高度浄水処理区域では全体的に若干低い値を示すものの0.049(hr^<-1>)以上であることがわかった。
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