平成19年度ではアナモックスジアクターの運転条件の最適化と高速処理を担う細菌種の同定と生物膜群集構造の解析を目的に研究を行った。 人工基質を用いた運転では、200日以上にわたって除去率70%以上を維持しながら安定した運転が達成でき、その窒素除去性能は8 kgN/m3/day以上を達成できた。有機物を含む排水として都市下水処理場の処理水(放流水)をアナモックスリアクターに通水した場合、放流水中に含まれる有機物濃度はわずかであり、アナモックス細菌の活性には影響を及ぼさないことが確認できた。 アナモックスサアクター内の微生物群集構造を解析したところ、リアクター内にはアナモックス細菌が優占種(90%)ではあるものの、それ以外の細菌(10%)も存在しており、これらの共存細菌は系統学的に非常に多様であった。さらに、MAR-FISH法によりこれらの共存細菌の基質利用特性を調査した結果、リアクター内ではアナモックス細菌の代謝産物を共存細菌が利用していることが示唆された。また、優占的なアナモックス細菌は系統学的に酢酸に対して耐性があるアナモックス細菌と近縁であることが明らかとなった。このことは有機物を含む排水に対してアナモックスプロセスを適用する上で、有利であると考えられる。 来年度はメタン発酵・嫌気性消化後の脱離水のような低分子有機酸を含む排水への適用を目指すために、アナモックス活性に及ぼす有機酸の影響を検討する予定である。
|