研究概要 |
平成20年度では実排水を想定した低分子有機酸存在下でのアナモックス活性の評価とアナモックスリアクター内に共存する細菌の構造と機能の解析を行った。 現在運転中のリアクターから採取したアナモックスバイオマスに有機酸を添加し、アナモックス活性試験を行ったところ、酢酸、プロピオン酸においてはアナモックス活性に影響を与えず、むしろ増加する傾向が得られた。系統解析やFISH法による観察の結果、アナモックスバイオマス内には二種類のアナモックス細菌が存在し、その一方は有機酸に耐性のある種に近縁であった。このように数種のアナモックス細菌をリアクター内に保持する技術が確立できれば、より様々な排水にアナモックスプロセスが適用できると考えられる。 16S rRNA遺伝子に基づく系統解析の結果からアナモックスリアクター内に共存する細菌としてChloroflexi門, Betaproteobacteria綱, Chlorobi門に属する細菌が存在することが明らかとなった。cross-feedingを利用する2段階に分けた培養法によってMAR-FISH法を行った結果、従属栄養性のChloroflexi門の細菌がアナモックス細菌由来の有機物質を利用していることを明らかにした。また、リアクター内に存在するChloroflexi門の細菌が、糖類を始めとする各種の有機物質を分解する能力を有していることを明らかにした。これらの結果によりChloroflexi門の細菌がリアクター内に有機物質の蓄積を防ぐ働きをもつことが示唆された。
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