本研究では東南アジア特有の現地の気候や風土ならびに経済状況にも配慮した生物反応型埋立地覆土層を開発することを目的として現地調達可能な材料を覆土材として利用するとともに覆土中のメタン酸化細菌群(MOBs)の有効利用により、メタン酸化を効率的に利用する覆土工法および処分場管理手法を提案する。透気係数2.3cm/sの土壌を用い埋立地ガス流量を国内の埋立地を念頭に置き10SCCMと設定した場合、大気の侵入深さは表層50cm程度であった。一方東南アジアの埋立地を念頭に置き、流量を100SCCMとした場合、表層下10cm程度までの浸入にとどまっており、ガス発生量による大気の拡散浸入への影響が示された。メタン酸化率に最適な覆土の含水率は10%で、これ以上では、ガスの透過性・酸素の供給が不足すること、これ以下では、メタン酸化細菌に必要な水分が不足することが示された。ただし、両条件とも4割前後のメタン酸化が確認されており、現場のガス発生量・環境条件に合わせて材料を選定し、充分なメタン酸化力の保持が可能であると考えられる。農業廃棄物由来の資材を混合した覆土で同様の検討を行った結果、木くずを5%混入させた覆土で、最も高いメタン分解率として17%が得られた。稲わらおよびもみ殻を混入させた場合はメタン分解率がやや低いこと、および含水率の影響を受けやすいことが示された。MOBsの分布調査の結果、pmoA(MOBs数の指標遺伝子)は、表層10cm下よりも30cm下の方が1-3オーダー程度多い傾向が示された。メタン分解率が10%を超えた条件においては、いずれもpmoAが10^7オーダー以上検出された(最大1.1×10^8MPN/g)が、存在量とメタン酸化率との間には明確な相関はみられなかった。以上のことから細菌数が一定量存在している条件下にあればメタン分解率影響するのは透気係数などの土壌の物理性であることが推測された。メタン酸化は表層から酸素力が侵入する深度まで起こるが、一方で、基質であるメタン濃度は表層に近づくに連れて減少する。深度30cmでPmoAが多いという結果は、この深度付近におけるメタン酸化細菌の活発な反応を示唆している。
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