1. 振動台実験によるMTMD法の大スパン構造への適用性の確認 鋼板を折り曲げたスパン86cmのアーチモデルを製作し、板バネと錘でMTMD模型を製作した。振動台実験を行い、周波数応答を比較した結果、実験結果と解析結果で応答の大きさや応答ピークが生じる周波数に若干の違いがあるが、通常TMDと比較してMTMDが設定バンド幅内で安定した制振効果が得られる特徴が確認できた。不規則励振に対する制振効果を確認するために、白色雑音を入力したときの加力時間内における応答変位の2乗平均値で制振効果を比較した結果、MTMDの優れた制振性能が確認できた。本実験によりMTMD法がアーチ構造のような曲面状の大スパン構造においても十分に適用性があることが確認できた。 2. 振動台実験によるMTMD法のロバスト性の確認 構造物の固有振動数変動に対するMTMD法のロバスト性を確認するために、アーチの1次モードの腹に錘を追加する簡単な方法で固有振動数を変化させて制振効果の変化を調べた。実験の結果、通常TMDとMTMDともに制御目標振動数での制振効果が高い。通常TMDの場合は目標振動数以外での制振効果のバラツキが大きいが、MTMDはバラツキが小さく固有振動数変動に対するロバスト性が確認できた。本研究では、入力は白色雑音1波のみであるがMTMD法の固有振動数変動に対するロバスト性の傾向は確認できたと考えられる。 3. MTMDの設置によりモード形状の変化が大きい構造物に対する設計法の提案 MTMDの設置によるモード形状の変化が大きい構造物においては、構造物単体ではなくMTMD-構造物の全体系におけるモード形状を考慮してMTMDの配置を決定する必要がある。そこでMTMDの設置によるモード形状の変化が大きい構造物に対する新たなMTMD設計法を提案した。解析的検討の結果、MTMDの分割数を増すに従い構造全体における制振効果が向上し、且つ応答のばらつきが小さくなる傾向があることを確認し、提案した手法の有効性を確認することができた。
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