本研究の目的は、粘弾性ダンパーを超高層建物の風応答制振に用いる場合に、長時間のランダム風応答振動に対する粘弾性ダンパーの温度上昇による特性の変化や、平均成分を有する風力に対する粘弾性ダンパーのクリープ変形が風応答に与える影響を、スケールエフェクトを含めて明らかにし、それらを精度良く再現できる解析手法を構築することである。以下に平成19年度の実績を述べる。 (1)粘弾性ダンパーを設置した風洞実験装置を用いて、都市気流を再現した境界層乱流中での風洞実験を行った。比較のため粘性ダンパーでの風洞実験も行い、ダンパー特性の違いが風応答特性に与える影響を明らかにした。 (2)提案した解析手法を用いてランダム振動時の粘弾性ダンパーの特性について検討を行った。粘弾性体は振動エネルギーを熱エネルギーに変換するため、振動時に温度が上昇するが、正弦波振動時だけでなくランダム振動時においても、熱伝導・熱伝達の効果により、温度が上昇し続けることはなく、ある温度でほぼ一定(定常状態)となることが分かった。温度が定常状態となることで、ダンパー特性もほぼ一定値となることが明らかとなった。また、長時間のランダム振動時のダンパー特性を、ランダム波を用いずに、等価な正弦波を用いて再現する、簡易評価手法(正弦波置換法)を提案した。この手法を用いることで、様々なランダム波を用いて検討を行う煩雑さが解消され、正弦波のみで長時間ランダム振動時のダンパー特性を評価できることを示した。
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