本研究の目的は、粘弾性ダンパーを超高層建物の風応答制振に用いる場合に、長時間のランダム風応答振動に対する粘弾性ダンパーの温度上昇による特性の変化や、平均成分を有する風力に対する粘弾性ダンパーのクリープ変形が風応答に与える影響を、スケールエフェクトを含めて明らかにし、それらを精度良く再現できる解析手法を構築することである。以下に平成20年度の実績を述べる。 (1) ランダム波形による粘弾性ダンパーの長時間加振試験を行った。ランダム加振時においても、正弦波加振試験と同様に、熱伝導・熱伝達の効果により、温度が定常状態となり、ダンパー特性も一定値になることが確認された。 (2) ランダム振動時の粘弾性ダンパーの特性を等価な正弦波により再現する「正弦波置換法」を実験的に検討するため、(1) で行った実験と正弦波置換した正弦波加振試験を行い、比較検討を行った。結果より、正弦波置換法はランダム振動時のダンパー温度、特性を精度よく再現しており、本手法の有用性を確認した。本手法は風応答時のダンパー特性を確認する実験手法として大変有用である。 (3) ダンパー温度および特性が一定(定常)となったかを判定する手法を提案した。本手法を用いることで、実験時間の短縮が可能となる。今後は実験ケースを増やし、この判定値の予測手法を確立する予定である。 (4) ランダム振動時の解析に用いる熱伝達係数を、置換した正弦波置換実験と同様の値を用いることができることを確認した。また、その値は置換した正弦波の最大速度に依存することが明らかとなった。
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