研究課題
本研究では、地震の規模はその地震の前回からの経過年間によって年々少しずつ増大すると仮定して強震動を推定し、対象建物については、地震が発生する時期までの現存建物の棟数やその全体の構成比などが時系列で変化していくと仮定して、時系列的に建物被害予測を行う、即ち「時系列被害予測手法」を提案し、想定南海地震に適用した。H20年度では、H19年度の研究成果を踏まえて、以下のことを明らかにした。1.推定した時系列建物床面積(2009〜2060年)と時系列建物被害率(2009〜2060年)から大破建物床面積を時系列的に推定したところ、大破建物床面積は時系列的に大きく変化することが分かった。即ち、南海地震の発生する時期(2036年を基準)は遅くなるほど木造建物の大破床面積が大きくなり、2054年で最大になり、RC造とS造建物の大破面積も大きくなり、遅いほど最大になった。2.比較検討のために、地震規模が2036年のままであり、建物床面積だけが時系列変化する場合による予測結果を出し、時系列大破建物床面積と比較したところ、実際の南海地震が2036年より前に発生すると、どの構造の建物に置いても地震被害予測結果は安全側に評価するものの過大評価となること、2036年以後に発生すると逆に危険側に評価してしまうことがわかった。また、建物床面積が2003年のままとして(建物ストック不変モデル)大破建物被害床面積を計算して、同じく時系列大破建物床面積と比較したところ、実際の地震が遅く発生するほど両者の差が大きくなることがわかった。3.最後に、中破以上建物によるCO_2負荷量を時系列に予測した。想定南海地震が2009年から2060年までに発生した場合、全体建物によるCO_2排出量は京都議定書に設定した年間目標値の41%から76%までを占める結果になり、廃棄物量の場合は1990年の全国産業廃棄物の約4%から約9%までを占める結果になった。巨大地震による環境負荷の影響はかなり大きいと言える結果が得られた。
すべて 2009 2008
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日本建築学会構造論文集 第74
ページ: 253-258
Proc. of 14th World Conference on Earthquake Engineering, Beijing, China, S02-021
ページ: CDのため、頁数なし