研究概要 |
鋼製骨組内にPCaRC壁板(厚さ200mm)を取り付けた固定した部分架構試験体の動的加力実験を行った。 締め付け用PC鋼棒に1本当たりのボルト張力として25kNを導入し, RC壁板に損傷が生じない程度の減衰力をRC壁で負担させたtestrunでは,ボルト座金とT形接合金物(いずれもSS400鋼材,摩擦面未処理の黒皮スケール)との摩擦面において,同種金属同士の摩擦摺動時に見られる焼き付き現象が発生しそれに伴い摩擦力が急増した。その後の加振において,ボルト座金の回転によるボルトのゆるみに起因する急激な摩擦力の減少が生じ,安定した摩擦力が発揮出来なかった。これらの不具合を改善するため,ボルト座金に溶融亜鉛メッキを施し,複数ボルトで一枚の座金を利用することとしたtestrunでは,焼き付き現象の発生を防止できるとともに,ボルトのゆるみが生じる座金の回転を抑制することが可能となり,すべり係数として約0.8の減衰力を累積すべり変位2000mmまで概ね安定して発揮することが可能であった。加えて,RC壁板に亀裂等の損傷は発生しなかった。一方,先のtestrunに比較し1.5倍のボルト張力(37.5kN)を導入することにより壁板への損傷の発生を想定したtestrunでは,繰り返し摺動に伴うボルト張力の減少によりすべり係数が低下したため所定の減衰力を得るに至らなかった。そのため,より大きな減衰力を得るために,繰り返し摺動時にボルト張力の低下を抑制するための皿バネの付加等の措置が必要と考える。
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