研究概要 |
鋼製骨組内にPCaRC壁板を取り付け固定した部分架構試験体の動的加力実験を行った。実験1では締め付けボルト呼び径M20, M22, M24(普通ボルト)の違いによる摩擦力の伝達能力の確認を行い, 実験2では, 締め付けボルト呼び径M24(普通ボルト)に対して, ボルト締め付け部に皿バネを付加することにより, 繰り返し摺動時に生じるボルト張力の変動を緩和できることの確認を行った。試験体に用いたPCaRC壁板の厚さは, 締め付けボルトの呼び径M20, M22では200mm, M24では250mmとし, 壁版内に所定の定着長さ4d(dはボルト呼び径)を確保した。実験1, 2で用いたPCaRC壁板のコンクリート強度は, それぞれ31, 5N/mm^2(普通コンクリート), 51.6H/mm^2(早強コンクリート)とした。いずれの試験体も, 平成19年度の研究成果から安定した摩擦力が発揮出来ることが分かっている摺動方面に2本のボルトを並べ一枚の溶融亜鉛メッキ座金を利用することとし, 一律ボルト張力25kN(試験体1体当たり4本の総計で100kN)を導入した。実験1では, いずれの試験体でも, 想定した摩擦力(ボルト1本当たり40kN, 壁長1m当たり400kN以上, 2面摩擦時すべり係数1.6)を発揮できたが, 締め付けボルト呼び径が大きいほどボルト張力の低下が抑制され大きな摩擦力を発揮できる傾向が観られた。実験2では, 皿バネの付加により繰り返し摺動に伴うボルト張力の増減が摩擦力に与える影響を緩和でき, より安定した摩擦力を発揮できることを確認した。なお, 繰り返し摺動に伴うボルト張力の変動, 特にその増加は, 亜鉛溶融メッキ座金とファスナー鋼板との摩擦面における固着部の成長によるボルト締め付け長さの伸長が原因であることが, 接合要素試験の結果より推測できた。
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