研究概要 |
1995年兵庫県南部地震において, 10階建程度の旧基準RC系建物が中間層崩壊する事例が多く見られた。ある層が完全に崩壊する中間層崩壊は, 人命を直接脅かす危険な崩壊である。現在でも旧基準建物は多く存在しており, 大地震時に再び旧基準RC建物の多くに中間層崩壊が起こることが予想される。したがって, 中間層崩壊が生じるときの応答性状を把握しておくことは重要である。平成20年度は, サブストラクチャ擬似動的手法により旧基準によって設計されたせん断破壊型RC柱に地震記録を入力して崩壊まで加力する実験を行い, 中間層崩壊性状を検討した。主な対象は中間層崩壊する9層建物とし, 最下層崩壊する3層建物を比較のために用いた。対象建物は, 旧基準の中でも1971〜1981年に設計された建物とした。試験体は実大とした8体である。崩壊層は9層建物では7層, 3層建物では1層とし, その層の構造耐震指標Isを0.4程度とした。横補強筋比Pwは0.25%と0.42%の2種類とした。入力地震動は3種類を用いた。本実験の範囲内で得られた知見を以下に示す。1)Pwが同じで層数が異なる場合,Pw=0.25%, 0.42%ともに9層建物の方が3層建物より小さな地震動レベルで崩壊した。これは崩壊層のIs値が同じ場合, 3層建物の最下層崩壊よりも9層建物の中間層崩壊の方が発生しやすく, より危険であることを示している。2)層数が同じでPwが異なる場合, 耐力20%時水平変形(水平力が最大耐力の20%まで低下したときの水平変形)で比較すると, Pw=0.42%はPw=0.25%の2,02倍であった。その結果, 同じIs値でもPw=0.42%の方がPw=025%よりも大きな地震動レベルで崩壊した。診断上は靱性指標Fの計算においてこのような違いを無視しているため, F値の評価法を改善する余地があるといえる。
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