阪神・淡路大震災で被災した建物において、鉄骨造の建築物では、耐火被覆があるために、鉄骨梁の端部等に生じた亀裂や破断を調べるためには、耐火被覆をはがすなどかなり大規模な作業が必要であり、耐火被覆の中を調べるのは困難を極めた。また、梁端部等に生じた亀裂は、大地震の際には亀裂の存在のために、梁端部等が破断に至る危険性が高く、そのような損傷は把握するべきである。 そこで、本研究では、RFIDタグとフィルムセンサーを組み合わせた亀裂検知方法に関する基礎的な検討を行い、その活用方法について解析的な視点から整理を行う。 平成19年度には、鋼材の亀裂検知に用いる2.45GHz帯の無線システム(RFIDタグとスキャナー)の透過性能について調査を行い、透過可能な材質と読み取り距離について整理を行った。その結果、鉄骨部材の耐火被覆や耐火材料として用いられるパーライトボード・ロックウール材・セラミックウール等は、100-110cm程度で読み取り可能であった。その他の材料については、ガラスはやや短い距離になるのと、金属系のものは透過せず、RC壁も透過できなかった。これらの点を考慮して、タグの設置する位置を決定する必要性がある。 また、ポリカーボネートやポリイミドなどの素材と導電性塗料を用いて、フィルムセンサーを設計・製作した。これらのフィルムセンサーを鋼材試験片に貼付して、疲労試験を行い、鋼材に発生する亀裂幅と破断するフィルムセンサーの関係を把握した。シート材料にポリカーボネートを用いた場合には、亀裂の発生とともにシートも破断したが、ポリイミドを用いた場合には、シートの破断は発生しなかった。ポリカーボネートのシートの場合には、亀裂幅が0.08mm程度以上の時には、亀裂の検知が可能であった。
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