本研究では、超高速計算機を用いて大規模計算を実施し、非常に高いレイノルズ数域における円筒形構造物まわりの流れを再現する解析手法の検討を目的とする。本年度は、昨年度構築した解析手法・条件の下で、乱流モデルの違いによる超臨界域流れの影響に関する考察を行った。さらに、レイノルズ数を変化させたときの超臨界域で見られる剥離バブルの形成について、得られた計算結果に基づき考察を行った。得られた知見を以下に示す。 超臨界域の流れは円柱から剥離した流れが再付着するため、その近傍では平均場としては正の風速(主流と同じ方向の流れ)になるものと考えられる。しかしながら、ダイナミックス・マゴリンスキーモデルを用いた場合、空力特性は実験結果と良い対応を見せたが、再付着現象が再現されなかった。一方、ダイナミック・ミックスモデルを用いた計算結果は、再付着点近傍で風速が増加するとともに平均的に正の風速が再現された。 ダイナミック・ミックスモデルを用いた計算結果を考察した結果、超臨界域の円柱まわりの流れは、円柱から層流剥離し、剥離点後方では死水域を呈する。その後、再付着点近傍で急激に乱流に遷移する。再付着点はスパン方向にランダムに点在し、淀み点である再付着点を中心とした流れの発散が生じる。この流れの発散により剥離バブルはスパン方向に乱されるものと考えられる。また、レイノルズ数の増加に伴い、流れが再付着する淀み点の間隔がスパン方向に広がるとともに、その付近の流れの発散の風速が急増し、剥離バブルは崩壊していく。剥離バブルが消滅すると、せん断層が傾き、円柱の背後で渦の巻き込みが認められる。
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