研究概要 |
本研究での水方式による躯体蓄熱暖冷房システムは, 高断熱建物における室内負荷の顕熱成分に対応するシステムである. 高断熱+水方式の長期計測及びその発展では, システムチューニング後の省エネルギー実績が定量化され, 札幌の一般的な事務所ビルに比べても40[%]以上の削減率となった. また, 水方式による躯体蓄熱暖冷房システムと併用する形で, 北国の冷涼な気候を有効に活用した外気冷房・自然換気・夜間換気を積極的に駆使し, 1. ダブルスキン, 2. トップライト型ボイド空間, 3. 地下ピット等を有する建物を対象に, 実測調査と数値解析を行った. 1. DSの性能はDS内の通風量によって大きく変動するため, 逐次積分法と換気回路網を連成させた非定常解析を行った. また, 年間冷暖房負荷に対する各パラメータの関係を効率的かつ合理的に評価する方法としてタグチメソッドを用いた. 札幌において内側ガラスの断熱性能を変更した場合, 暖房負荷が削減され, 9.7[%]の熱負荷低減効果が得られた. 更に, ナイトパージを行うことで札幌では16[%], 東京では11[%]の熱負荷低減効果が得られ, 寒冷地特有の冷涼な外気利用による省エネルギー効果が最も大きくなることが確認された【学会発表 : 6件】. 2. 模型実験や数値解析(Desktop Radiance等)を通じて, 発光効率を用いた測定照度から日射負荷を推定する手法を提案し, その妥当性について札幌の場合で感度解析を行った. その前提として, 両者の結果を比較した上でシミュレーションの信頼性を実証し, 気象データから得られる水平面全天日射量から, 天空状態を推定し, シミュレーション手法に汎用性を付加した. その結果, 照度に関する発光効率から日射量が算定され, 最終的にトップライト型ボイド空間への入射光による各階の日射負荷(直達日射と天空日射)の分配率が推定可能となった【学会発表 : 3件】.
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