本年度は研究計画達成のための準備段階として、以下2点の検討を行った。 1.従来から多用されてきた時間領域有限差分法(FDTD法)と比較して、メッシュ生成において自由度が高く、かつ汎用プリ・ポストプロセッサへの適応性が高いと考えられる、時間領域有限体積法(FVTD法)ベースの音響伝搬解析手法の定式化、およびプログラムコードへの実装を行った。さらに当該コードによる解析結果検証を行い、同一の解析対象・メッシュ分割・解析条件において従来のFDTD法と同一の解析結果が得られることを立証した。またFVTD法最大の特徴である非直交型メッシュにおける解析でも、実用的な解析結果が得られることを確認した。 2.解析手法と並んで実用上最重要である、実数音響インピーダンス型吸音境界条件(対流方程式型境界条件)式のFVTD法における離散化について検討を行った。時間方向および空間方向に各3とおり、計9種の離散化式を導出した。さらに各離散化式による解析結果の比較検討を行った結果、時間方向にCrank-Nicholsonスキーム、空間方向に境界面法線方向勾配項離散化型のスキームを適用した離散化式が最良の精度を有することを見出した。本境界条件は非常に基礎的でありながら、このような検討例は極めて少なく、かつ境界条件式はFVTD・FDTD法両者間で共通であることから、幅広い適用が期待される。 さらに以上の検討において作成したプログラムソースコードー式を、webページ(http://oshima.eng.niigata-u.ac.jp/0penFOAM/)上に公開した。本コードは全て有限体積法べースのオープンソース汎用CFD(数値流体解析)フレームワークであるOpenFOAM上に実装しているため利用が容易であり、国内のみならず海外においても機関ユーザを獲得している。
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