平成19年度における有限体積法による汎用線形音響数値解析手法構築の成果を受け、本年度は線形化オイラー方程式を用いた当該手法の時空間的変動を含む任意気流場下における音響伝搬解析への拡張を行った。自然風による屋外流れ場は典型的にはマッハ数0.1以下の低マッハ数であることから、従来航空工学分野で用いられてきた高次精度差分法に替え、空間方向にはより汎用性に優れる非構造格子有限体積法、時間方向にはRunge-Kutta法によって離散化した。離散格子点は、時空間方向ともに汎用化時の扱いやすさに優れるコロケーテッドグリッドを採用した。また屋外音響解析は開領域問題であることから、吸収境界条件の導入が必須である。本研究では従来から多用されている原PMLに替え、方程式を各座標軸方向に分解する必要がなく、非構造格子有限体積法への導入に適していると考えられたHu(2001)によるUnsplit variable PMLを導入した。提案手法を実装したコードによるICASE/LaRCWorkshopのベンチマーク問題の解析により、当該解析手法及び吸収境界条件の妥当性を実証した。 本研究では、高次精度差分法による従来の線形化オイラー方程式解法の課題であった汎用化の困難さを、低マッハ数下の解析を前提とすることで、精度には劣るが汎用性には大幅にすぐれ、多くの汎用CFDコードの基礎となっている非構造格子有限体積法を導入することで解決を図った。さらに、提案手法をオープンソース汎用有限体積法ライブラリのOpenFOAM上で実装することで、本手法の入力条件として必要となる屋外気流場解析のための汎用CFDコードとの親和性を実質的にも大幅に向上を図った点が特徴である。
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