本年度は以下の研究を実施した。 (1)環境ストレス移動測定カートの改造 研究代表者が既往研究で開発した不均一・非定常性の強い熱環境ストレスの移動測定カート(Hl7〜18年度科学研究費補助金(若手研究(B)、課題番号17760466)で制作)を改造した。本研究は被験者へのストレスの要因を広く明らかとするため、熱以外の環境要素(照度)についても計測可能な改造を施した。また、気流速度の移動計測する際にカート前方を歩く被験者によって生じる気流の乱れの影響を緩和するため、測定位置の見直しを行なった。 (2)街路・公園内の生活者の行動に伴う屋外環境ストレスの変化が生理・心理反応に及ぼす影響の実測ならびに数値解析 (1)の環境ストレス測定用移動カート、並びに人体温熱生理に関わる各種計測機器を用いて、街路空間の熱環境の被験者実測を行った。ここでは、各種センサーを取り付けた被験者を移動カートが追随し、被験者が受ける熱ストレスや心理面に作用するストレスを計測した。実測の結果、歩行空間の天空率と熱環境(特に日射環境)の関係に有意な関係が見られることが明らかとなった。また、歩行者の行動に伴う熱環境の推移と温熱生理的メカニズムの関係を更に詳しく分析するため、実測時の気象条件を想定した屋外温熱環境CFD解析と人体温熱生理モデルを連成した分析を行った。ここでは、実測時に歩行者が体験した温熱環境履歴に基づく環境条件を与えた場合と、これとは逆の履歴(歩行経路を逆転)の熱環境条件に曝露された場合の人体熱収支の変化を比較した。その結果、歩行経路の逆転に伴う、休憩のタイミング、気流の相対速度の変化により温熱快適性の評価が異なるものとなることが分かり、歩行者の行動を考慮した熱環境評価の有意性が確認された。
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