大阪市西区堀江周辺をフィールドとして、自動車による移動観測と定点観測をおこない、市街地の気温分布を把握し、地域に適した熱環境改善の方策を提示するための基礎的な分析をおこなう。前年度までに構築したGISデータベースを用いて、H20年度は、気温分布の形成要因について、緑被率のほかに、河川からの距離や交通排熱、放射環境などを説明変数として気温の重回帰分析をおこなった。説明変数の選択はAICによる。 幹線道路上の気温は、どの時間帯も交通排熱の影響が無視できない。特に、日没後の8/2(20時)では交通排熱の影響が大きい。日中は路面温度や赤外放射量、街路幅員の影響が大きいことがわかった。日射の影響による路面温度、壁面温度の上昇が気温上昇につながっていると考えられる。また、街路幅員Dは回帰係数が正の値で選択されている。街路幅員が広いと風通しは良くなるが、日射を受ける面積が増大することの影響が大きいと考えられる。緑被率は海風日の8/2(15時)は負の回帰係数で選択されているが、逆に8/3(4時)は正の回帰係数となっており、さらなる精査が必要である。 細街路の気温は幹線道路と異なり、交通排熱は説明変数として選択されていない。海風日の8/2は深夜まで西風であったことから、8/2(20時)、8/3(4時)においては木津川からの距離の影響が大きく、日没後は川に近い方が気温が低くなっている。8/3(4時)では高さ方向平均グロス建蔽率の影響も大きい。高さ方向平均グロス建蔽率は風通しの指標として用いられているが、放射冷却の指標にもなっていることが推察される。8/2、8/5(15時)において赤外放射量が選択されたが、路面温度は選択されていない。細街路では日中、日射の影響による路面温度の上昇より壁面温度の上昇の方が気温に与える影響が大きいと考えられる。 以上より、GISデータベースによる地域の気候資源や既存インフラの検索、それらを活用した夏季熱環境の予測や改善策の提案が可能となった。
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