研究概要 |
平成19年度は、作業の複雑さや性質及び音源の意味性に着目し、知的作業時の騒音の妨害感に関する被験者実験を実施した。明治大学理工学部の簡易無響室内において、音環境の条件を制御できるシステムを構築し、被験者に2種類の知的作業(2桁の加減算の暗算、漢字の暗記書き取り)を5分間賦課した条件で、有意味騒音(ニュース放送、音楽音)及び無意味騒音(ホワイトノイズ、1000Hzの純音)を受聴点のL_Aeq,5minで50dBとなるように呈示した。被験者は聴力正常な男女各10名とし、各被験者は各作業(2水準)と騒音(4水準)の組み合わせからできる8水準に、作業のみ(暗騒音のみ)の2条件を加えた計10水準の試行を経験した。なお、実験中の暗騒音を一定に保つため、作業中はピンクノイズを受聴点で30dBのレベルで呈示し続けた。各作業終了後、作業中に呈示された音刺激に関して、10段階の評定尺度法を用い、各作業に対する妨害感を被験者に求めた。 これらの実験結果を用いて分散分析及び多重比較を行い、音源の意味性が作業能率と妨害感に及ぼす影響を検討した。これらの結果から、(1)音源の意味性は漢字暗記書き取り作業の作業能率に影響を及ぼすこと、(2)両作業において、ニュース放送が最も妨害感が高く評価されること、(3)有意味騒音は無意味騒音よりも妨害感が高く評価されること、(4)妨害感に及ぼす音源の意味性の影響は、作業の性質に依存することが示唆された。 上記の研究成果を、19th International Congress on Acousticsにおいて発表した。
|