建物の界壁などに用いられる中空二重壁は、中高音域では非常に高い遮音性能を示す一方で、低い周波数領域での遮音性能は、共鳴透過現象(共鳴透過周波数:f_<rmd>)により極めて低い。本研究では、ヘルムホルツレゾネータを用いて、f_<rmd>を含む低い周波数領域における遮音性能の向上手法を提案する。 レゾネータを中空二重壁内に設置すると、レゾネータの共鳴による遮音性能の増加とともに新たに共鳴透過(遮音性能の低下)が生じる。したがって、レゾネータを有効に用いるためには、その共鳴透過の抑制が重要である。そこで、平成19年度に提案した空気層内にレゾネータを設置した中空二重壁の遮音性能の推定方法を用いて、レゾネータの音響性能の最適化を理論的に行った。レゾネータの孔の直径を小さくし、数多く開口することにより、レゾネータの音響抵抗を増加させ、レゾネータの空隙部の容積をあまり大きくせずに音響リアクタンスを最適な値にすることにより、高域側に生じる共鳴透過を抑制することが出来ることがわかった。 次に、遮音性能試験では一般的な大きさの10m^2の試験体を対象に、レゾネータの適用方法を実験的に検討した。前年度の検討においてレゾネータの固定方法および構成材料はレゾネータの挿入効果に大きく影響を与えないことがわかったので、中空二重壁の構成部材のひとつである鋼製スタッドに孔を開け、壁内にレゾネータ構造を実現した。二重壁のf_<rmd>に等しくなるようにレゾネータの共鳴周波数を調整した。前述の検討結果を踏まえて、その孔は数mmの直径で、多数開口した。その結果、レゾネータの挿入による遮音性能の低下はみられず、共鳴透過周波数よりも高く、広い周波数領域で最大5dB程度の向上がみられた。また、二重壁の空気層内にレゾネータが占める容積率を増加させると遮音性能は増加するが、容積率が大きくなると遮音性能の増分は低下することがわかった。
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