昼光利用により建築物の室奥部分の明るさを確保することができれば、昼間の照明の補助点灯を減らすことに繋がり、省エネルギー性が向上する。従来の昼光利用として、窓から光を直接的に採り入れる手法と、室内の内装反射による間接的な手法があり、最近では、室奥部分や非居室部分へ光を導くライトダクト等の先進的な装置が開発されている。新しい手法を含めた光を室奥へ導く手法に対しては、採光可能性の基本的指標である「昼光率」とは異なり、光を導く性能として評価する必要がある。そこで本研究では、この室奥へ昼光を導く性能を「導光率」として提案するための基礎的検討を行うことを目的とした。昨年度に実施した既存の導光手法に関する情報整理及び導光手法のタイプ分類、模型実験による日照調整装置毎の開口近傍と室奥の照度比の検討結果を基に、本年度は導光率導出のため以下の検討を行った。 昨年度得られた知見に基づき、一定の屋外状況における様々な導光手法(日照調整装置、ライトダクト)を室内形状、内装反射率の異なる建築室内と組み合わせ、室内各面の照度分布を算出する系統的なシミュレーションを実施した。シミュレーションの結果から、導光性能のパラメータとして最低限必要なのは、日照調整装置等の性能、屋外のグローバル照度(全照度)に基づく直達照度及び天空照度、室奥の床面照度、室奥の相対的な位置関係であると考えられた。 これらの検討に基づき、導光率の枠組みとして、直達照度と天空照度それぞれに対する日照調整面など放光部の光量(屋外に対する放光部の明るさ導入比率)と放光部の拡散性、さらに室奥部分の位置関係を勘案した床面照度等を比率として総合する考え方を提案した。
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