本年度の研究予定項目として、1.室配置システムに関連する既往研究の問題点抽出と体系化、2.室配置システムを適用させる対象建物の調査と整理、3.プログラムのアルゴリズムの検討と実装 を掲げていた。1.については、これまでに発表された室配置問題に関連する文献をレビューし、室配置問題が本質的に抱える問題と既往のシステムの課題を抽出することで、室配置システムを実用に至らせるための必要条件を導き出した。2.については、1で得られた課題を踏まえ、適用が可能な実作建物の調査を行い、室配置システムの適用に至る実用的な条件を整理した。調査対象として、近年建築関連雑誌などで発表された、主に東京方面に存在する特徴的な住宅20件程度を選出した。3.については、これまで発表された室配置システムのうちいくつかを実装し、申請者が開発したシステムとプログラムレベルで比較検討することで、来年度以降のシステム開発のための準備を行った。本年度の研究スケジュールはほぼ予定通りとなった。本年度得られた成果として、申請者がこれまでに開発したものも含め、既往の室配置システムは、条件やビルディングタイプの異なる建築の平面に数多く適用できるよう意図されたものが多いが、実際には、コンピュータで建築の平面を演算させるためには、無限に近い与条件を人間が適宜絞り込む必要があるため、オールマイティなシステムを開発することはほぼ不可能かつ有意義ではないという結論が導かれた。したがって、実際の建築設計にコンピュータの演算を利用できるのは、ある限られた条件のもとで、限られた計算結果を効率的に得る場合のみである。今後は上記の前提を踏まえ、新たな視点からアルゴリズムを見直し、実際の建物の設計内容とシステムによる計算結果をフィードバックしながら、システムの有効性に関して考察していく予定である。
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