中心視・周辺視に関わらず、人間の五感は現実の環境の中で人間が能動的に行為するとき、その真価を発揮する。本研究では中心視および周辺視の役割を検証するため、活動中の被験者の任意の視野部分を制限することのできる実験装置を使用する。この実験装置によって視野のいろいろな部分を制限し、そのときに生じる被験者の行動の変化を観察し制限された視野の部分が本来担っていた役割を解明した。 A)曲がり角の縁や壁と床の境界などの環境情報は、中心視あるいは周辺視によって持続的に捉えられる傾向にある。本研究により、そうした環境情報の中には、ある一瞬中心視で精密な情報を抽出された後、周辺視でその後の状態を補足的に把握するようになるものや、逆に周辺視による探索活動によって発見された後に中心視による情報獲得が続くものがあることがわかった。 B)経路形状が複雑な歩行空間では、中心視と周辺視が同時に機能していなければ記憶することができないような場所がある。本研究により複数回同じ場所を歩行しているのにもかかわらず、中心視だけ、あるいは周辺視だけといった、単一の視野機能の働きだけではなかなか経路の同定ができないような場所の特性を明らかにし、そこで必要とされる中心視と周辺視の協応の実態を探った。 C)距離感を把握するためには、いくつかの情報を一つの視野の中で一括して捉えることが必要である。どれだけ重要な情報であったとしても、中心視あるいは周辺視においてそれらをバラバラに捉えていたのでは正確な距離感の把握にはつながらない。一つの視野の中での複数の情報の獲得、そこに中心視と周辺視の協応が強く作用していることを明らかにした。
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