研究概要 |
本研究は,群衆のパニック発生メカニズムの解明を目的としているため,まず最初に,マルチエージェントシステムによって,群衆の定常流動を再現する必要があった.当初は連続空間内を自由にエージェントが動き回るモデルを考えていたが,エージェントの行動制御をより容易に行うため,連続空間内にランダムに配置した無数のノードとそれらを結んだドロネーネットワークグラフで近似したモデルで,シミュレーターの構築を行った.こうすることによって,エージェントの経路が限定され連続空間よりも扱いやすくなることに加えて,このグラフを用いてプランニングの評価もできるようになることが可能となった. 個々の歩行者エージェントはこの連続空間を模したドロネーグラフ上を,目的地,移動速度,周囲の歩行者との距離の取り方,進行方向の同調,等いくつかの属性(パラメータ)を持ちつつ避難すべく移動するようにした.エージェントの下図を増やせば,群衆を再現できることになる.これらを市販のマルチエージェントシステムソフトウェアではなく,C#言語を用いて新たに構築することにした.これは,市販のソフトウェアでは重要な部分がブラックボックス化してしまう可能性があるため,それでは個々のエージェントの振る舞いを観察するに当たって支障が出かねないと考えたためである. 平成20年度はこのシミュレーターに具体的なプランを境界条件として与え,避難等で群衆が殺到する状況において,どのような問題が起きるのか,またどのようにしてパニックへと発展するのかを検討する.
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