研究課題
平成19年度は、「都市計画の一般理論」の読解を進め、住まいの集合としての街区と街路の適切なスケールを設定する理論を理解するとともに、(1)バルセロナを始めとするスペイン諸都市の旧市街地の変容過程を学術論文としてまとめ、都市計画学会の国際シンポジウムにて発表した。スペインにおける歴史的市街地の再生にあたり、バルセロナの取り組みが先進的であり、その他の都市の再開発に影響を与えたことを指摘した。(2)セルダの計画理論に沿って形成された現代のバルセロナの市街地の変容過程ならびに現況を概括し、都市計画学会の学会誌や東京大学COEによる出版物において論説を発表した。歴史的市街地においても旧工業地においても、セルダ市街地の道路線がその後の再開発に大きな影響を与えた可能性が示唆された。(3)バルセロナと東京を対象に、オリンピックに関連した大規模再開発に際して、それぞれの都市固有の構造をどのように踏まえて都市戦略が練られたのかを考察した。オリンピックの準備期までにインフラが貧弱だった東京はインフラ事業を再開発の中心に据えざるを得ず、他方、セルダ計画に基づいてインフラがすでに整備されており明確な都市構造を有していたバルセロナは基盤整備にとどまらない総合的な再開発を行えたことを指摘した。(1)〜(3)に示した一連の論説は、セルダの拡張市街地形成理論が既成市街地に与えた影響を考察するための基礎的な研究であり、セルダ理論の現代的意義を考察する次年度以降の研究の手がかりとなることが期待される。また、一次資料や関連文献の収集ならびに現地の専門家との議論のため、2007年9月に渡西した。セルダの計画理論やバルセロナの都市再生の取り組みは欧州で注目を集めているが、それらに関する情報・論考はわが国において依然希少であり、その点において本研究は重要であると考えられる。
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International Symposium on City Planning 2007, The City Planning Institute of Japan
ページ: 815-824
都市計画 266
ページ: 72-72