本研究の目的は、実際に高齢者の地域居住をサポートしている相互扶助的な場を対象として、その実態を明らかに、その特性と構造を考察することである。これにより高齢者の地域居住をサポートする環境の必要条件を提示したい。なお、本研究では地域住民らによる相互扶助的サポートを「共助」と呼ぶ。 平成19年度の実施内容を以下に示す。まず、事例考察対象として、広島県内に存在する共助の場と仮定される場所2か所に着目した。そしてこれらのうちどちらかを利用し、なおかつ施設Sのデイサービスまたは小規模多機能型サービスを利用する要介護高齢者の中から対象者4名を選定した。次に対象者の施設S利用日と非利用日における行動観察調査(施設内及び地域内)を行った。一人の対象者に対して、施設S利用日と非利用日の様子を、それぞれ少なくとも2回調査した(予備調査は別途行った)。調査は2007年6月〜2008年3月にわたり断続的に行った。また、補足的にアンケート及びヒアリング調査を実施した。アンケート調査では対象者属性について把握した。ヒアリング調査は、適宜、対象者の生活行動・習慣等について施設スタッフ及び地域住民等に行った。これらの調査データをもとに、(1)対象者の地域居住サポートの実態の把握、(2)共助の場の特性と構造考察を行った。 平成20年度は対象者の時系列的な利用実態の変容を追跡調査するとともに、(3)地域居住サポート環境とT町地区の地域特性との関係についての考察を付加してまとめる予定である。 本研究の意義は、伝統的コミュニティにおいて展開される「共助」に着目することによって、今後の超高齢社会における高齢者の地域居住をサポートする環境を構築するために有効な知見を抽出しうる点にある。
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