本研究は、郊外住宅地における住替え及び世帯更新の実態を捉え、居住更新と居住サービスの可能性を考察した。本年度は、新しい研究対象として、1971年に開発された福岡県太宰府市に位置する戸建住宅地を設定し、(1)町丁別人口動態、(2)空地・空家の用途および分布、(3)定住・住替えの動向に関するアンケート分析、以上の3つの調査・分析を行った。 分析の結果、当該住宅地の町丁別人口動態では、高齢化率は大半の町丁で30%前後であるが、人口減少率は差異があり、減少が著しい町丁と維持している町丁が確認できた。が当初の目的であった高齢世帯の域内住替えや持家取得といった新たな居住継承特性が窺えた。 さらに、空地・空家の実態分析より、長期の放置空家は少なく、住宅が除却され駐車場に活用されており、現在は空地がストックされている状態にあることを明らかにした。空地化による住宅区画の減少が人口減少の要因の一つであることを指摘した。 続いて、現在の居住者を初期定住世帯と転入居住世帯に区分し、居住更新の実態を把握した結果、近年に転入する世帯には高齢世帯も存在しており、これらの転入は退職後に土地を取得し、持家を建設して居住していることを示した。そして、このような居住動向が人口は減少していないが、高齢化率が高いという状況の理由であることを論証した。 最後に、居住更新と居住サービスの可能性として、(1)高齢転入世帯が存在しており、それ以外の転入世帯は明確な定住意向を持たないことから、長期の安定的な居住には必ずしも結びついていないこと、(2)一方で転入世帯は近隣からの転居、子世帯の近居など居住における属地性が大きいこと、(3)その範囲は従来の町丁や住宅地ではなくもう少し広域な住区レベルであり、居住サービスの圏域を形成していること、以上の考察を行った。
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