1. 本研究は、郊外住宅地における住替え及び世帯更新の実態を捉え、居住更新と居住サービスの可能性を考察するものである。本年度は、本研究の最終年度として、定住および転入高齢者世帯の外出活動を調査し、居住サービス支援の方策を示すとともに、高齢者居住の継承を前提とした住宅宅地の空間再編の提案を行った。 2. 最初に、研究対象としたND団地における居住実態を初期居住世帯と転入居住世帯で分析した結果、大半の世帯が戸建持家に居住しており、現状では借家化は進んでいないことを明らかにした。また、転入居住世帯の中には近年の転入もみられ、若い世代から高齢世代まで分散していることを示した。 3. 次に、将来の居住意向は、初期居住世帯の定住意向は、約8割であるのに対し、転入居住世帯は、約5割と明確な差があることを実証した。一方、初期居住世帯でも約5割が子世帯との同居意向を持たず、高齢者のみの居住が継続することを示した。 4. さらに、高齢居住者の日常外出行動の傾向は、活動内容によって外出頻度と外出場所に固有性があるが、交通手段は自家用車が中心であることを明らかにした。特に、趣味などの定期的活動は目的性が強いが、退職前からの継続的活動と退職後の活動では行動特性が異なることを指摘した。続いて、転入前居住世帯の転入前居住を世帯主年齢別に考察した結果、世代によって転入前の住宅形式や居住場所に明確な相違がみられ、時代によって住替え特性が変化していることを示唆した。 5. 以上の考察結果より、地域住民による新たなガバナンス組織がサービス供給の基盤施設を運営することが求められること、また、これらの基盤施設は空家・空宅地を活用し、新たな地域施設として位置づけられることを示した、提供サービスは、住民の要求度に応じて簡易診療、日常買物、銀行の出先機関といった小規模多機能型の新たな形態が求められることを指摘した。
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