最終年度であるH21年度は、バンダアチェ市内で供給された現地再建による復興住宅の実際の増改築と住まわれ方について、現地調査をまとめながら分析を行った。就寝の場は、ルアン・タム(居間)を用いる場合もあるが、多くはカマル・ティドゥール(寝室)である。子供が6~8歳になると、就寝を別にしている事例が多い。また、礼拝の場は、就寝の場と重なることが多い。基本的には食寝は分離されている。ダプール(台所)の設け方に、住宅平面の使われ方の違いが顕著に見られた。増改築がなされていない場合は、1.ルアン・タムの奥に配置するケース、2.自助建設によりルアン・タムに間仕切壁を設けて、その奥をダプールとするケース、3.最後に居住人数が少ない場合は、奥のカマル・ティドゥールをダプールにするケース、の三通りがある。 増築する場合、1.まず始めに着手されるのはダプールが多い、2.もしくはダプールを室内に留めたまま、テラスを作りルアン・タムのスペースを拡充するケースもあった。3.また、建設時のプラン変更により、カマル・ティドゥールを1室減らしたものや、4.供給された2つの住居を結合しているケースもあった。ダプール増築のケースの多さより、一面で早期の供給を目指した事はあるにしても、調理空間の計画は建設当初段階から考慮される問題であると判断される。 以上は、主として国連ハビタットが供給した復興住宅についての分析だが、ドナーによっては、屋外の庇空間に簡単なダプールを設置・供給している場合もある。こうしたドナー間の違いや上水道の蛇口設置とダプールの関係などについては、今後さらなる追跡調査が必要である。
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