研究概要 |
2002年に個室・ユニット型特別養護老人ホームが制度化され,ユニットで調理を行う施設が現れ始めたが,圧倒的多数の特養では,セントラルキッチンで大量調理された食事を一斉に食するという「食」の提供方式が続けられている。そこで,本研究では,先駆的に「ユニット調理」の効果の検証を研究目的として,「個室,ユニット型」特養(定員60名,6ユニット)1事例を調査対象とし,2ユニットで,両リビングのビデオ撮影による定点観察と,1日14時間の調理職員の行動観察調査を行った。その結果,1)介護職員がリビングに滞在する時間は,一人当たり3時間19分(8時間勤務に換算)に対し,調理職員のリビングへの滞在は,2名合計で10時間8分リビングであった。このことから,介護職員よりも調理員のリビング滞在時間が多いことが把握された。2)次に,時間帯ごとの見守り可能時間を,メイン調理ユニットとサブ調理ユニットで比較し,介護職員のリビング不在時間帯の中で,調理職員による入居者への見守りが可能な時間が何分発生したのか,その時リビングに在室していた入居者数を併せて分析した結果,調理しないユニットでは,調理員の滞在がわずかであったのに対して,メイン調理ユニットでは,調理が行われるため,調理職員の見守りの可能な時間が多く発生することが把握された。以上2点から,"見守り"の役割がユニット調理にあることが見出された。なお,調査対象とした特養では,職員配置から2ユニットのうちの片方でユニット調理を実施し,もう一方のユニットでは,簡単な盛り付け等に留まっていた。効果を双方のユニットにもたらすためには,交互のユニットで調理するなどの工夫が必要である点が課題として見出された。
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