本年度はロサンゼルスの一般的な建売住宅の調査とMar Vista Tract維持保存メンバーへのインタビュー調査を中心に研究を遂行した。 ロサンゼルスの建売調査では土日のオープンハウスを利用し、建築年・価格・規模などを条件にピックアップした19戸の住宅を見て廻った。さらにロサンゼルス市のBuildingand Safetyでは調査した住宅の増改築履歴などの資料を得た。平成21年度はそれらの資料を整理し、ロサンゼルスの建売住宅の現状や一般的な住宅の傾向を明らかにする。 インタビュー調査ではMar Vistaの維持保存活動を行っているHPOZ(歴史的保存地区)ボードメンバーを対象に、維持保存の仕組みとMar Vistaが抱える問題点について伺った。インタビュー結果の一部は、今までのMar Vista研究と合わせ、2008年9月に行なわれた10^<th> International Docomomo Conferenceで発表した。同大会では集合住宅についてのディスカッションも行われ、住戸と周辺環境との関係の重要性や大規模開発の抱える問題と今後などについて意見交換が行われた。各国の研究者の集合住宅に関する意見を聞くことができたことは本研究を進める上で非常に貴重であった。Mar Vistaでのインタビュー調査についてはHPOZに焦点を絞った報告もまとめたいと考えている。建売団地の先行事例であるMar Vistaの維持保存の仕組みについて明らかにすることは今後日本の建売団地の維持保存に取り組む上での貴重な資料になろう。 その他、他研究に合わせて、Mar Vistaと同時期に建設された郊外建売団地レビットタウンやニューヨーク近代美術館で行われた量産住宅・建売住宅の展覧会「HOME DELIVWERY」を見学する機会に恵まれた。それらの資料も合わせればアメリカの建売住宅についての分析に厚みが増すと考える。
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