国内の劇場・ホールを様々な観点から整理した上で、文献やヒアリング等を通して一般開放性を重視した10施設程度リストアップした。中でも、劇場・ホールを中心として練習施設を多く配置している北上文化交流センターさくらホール及び、劇場・ホールという文化施設を中心としながらも美術館や図書館など他機能を複合させている茅野市民館を、地域に根差し開かれた劇場・ホールの典型的で優れた事例として調査対象とした。実態調査は、共に4日間行い、オープンスペースの施設利用者を観察できる場所で、開館から閉館まで1時間毎に写真による記録、及び、利用者の人数・年齢層・性別・行動内容を記録した。また、施設利用者に対して、施設利用実態や施設に対する様々な意識・評価について、紙面によるアンケート調査、及び補足的にインタビュー調査を行った。その結果、主に以下に述べる様な一般開放性を重視した劇場・ホールの利用者実態や意識を明らかにしたことは、今後の劇場・ホール施設の計画・設計に有効な指針を得たと云える。 具体的には、(1)日常的な利用者の施設までの所要時間は概ね30分以内であること、(2)自由に使用できる適度に椅子や机が配置され、静かで居心地の良い空間で休憩や勉強・打合せなどに適している空間が、再度来館する大きな要因であること、(3)利用者の属性としては、学生・主婦や無職の老人が多いのはある程度予測できたが、会社員の利用が以外に多かった。その利用目的の多くは、会議・セミナーや仕事が終わってからの活動であることから、一般開放性を重視する際には、気軽に使用できる会議室・スペースの設置や特に平日では閉館時間がポイントとなること、(4)一般開放性を重視した劇場・ホールは、一般の劇場・ホールと比較して利用者にも日常性がある様に感じられていること、など今後の劇場・ホール施設の計画・設計に有効な指針を得た。
|