現在改修工事中の伝統木造建築物(寺院1棟)を事例として、3次元情報管理システムの開発に関して以下の作業を進めた。 (1)システムの枠組みの検討 事例とした寺院の管理者や耐震調査研究委員会、工事関係業者との意見交換を通して、建物の保全に必要な情報項目やその管理に必要なシステムの枠組みや実現すべき機能性の優先順位について整理した。具体的には、改修工事に伴い実施された損傷調査や補修内容を優先的に機能対応することとなった。 (2)システム詳細設計のためのデータサンプリングとシステム運用モデルの検討 (1)データサンプリングとその分析 工事関係業者から、部材単位の調査情報(部材損傷、補修、耐震補強内容)の提供を受け、従来の部材情報の項目も含めてシステム内に蓄積する方法について検討した。 (2)システム運用モデルの検討 建物の将来的な維持管理や定期点検については建物管理者や耐震調査研究委員会等でまだ十分に議論されていないため、システムの長期運用方法については次年度の確定作業とする。 (3)システムの機能設計とプロトタイプの開発 (1)3次元部材オブジェクトを介した建物各部の多元的な情報集約機能の仕様設計と開発 伝統木造建築物保全に必要な部材の属性情報(基本情報、損傷状況、補修内容など)を整理し、仮想空間内でそれらを3次元の部材モデルに直接入力できるインターフェイスを設計し、開発した。 (2)場所の記憶に基づいた情報管理・参照 3次元部材モデルのクリックにより(1)で入力された属性情報を閲覧できる機能、特定の属性情報から関連部材を検索してそのモデルに視点を合わせる機能などを設計し、開発した。 (3)各種部材情報の存在・種類・内容の可視化 属性情報の種類・内容に基づいて、該当する部材モデルを仮想空間内でカラーリングして種類別・ランク別にハイライトする機能を設計し、その基本機能(締め金物の枚数に応じて色分け表示する機能)を開発した。
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