1.日本における自然葬地の計画に対する価値評価のモデル構築とその検証を、共分散構造分析を用いて試行した。研究代表者による既往の研究から、日本における自然葬地に対する評価基準としても有効と考えられる四つの価値概念を抽出し、それらを潜在変数とした因果関係モデルを仮定し、それぞれの潜在変数に対する観測変数としての評価項目を設定した。 2.1の結果から、「緑地」と「墓地」という自然葬地の景観に関する二つの評価基準を抽出し、これらを潜在変数に限定したアンケートと結果の共分散構造分析を行うことで、日本における自然葬地の計画に対する価値評価のより高精度なモデル構築とその検証を行った。1、2の結果から、日本においては自然葬地の景観としては樹林型の景観を主とするものが好まれることが明らかとなった。 3.1、2の結果を受け、樹林をベースとした景観中に、緑地としてふさわしい公共的な空間性と、送葬の場として相応しい私的な空間性とを同時に実現することが課題あると認識した。そこで、樹林景観を主とする公共オープンスペースの事例である、埼玉県「けやきひろば」をケースとして、敷地内の位置と景観特性がいかなる場合に「ひとりでいやすい」空間がえられるか、現地調査と画像を用いたSD法と因子分析による景観特性の分析を行った。 4.自然葬地の景観において要求される「公共性」と「個人性」の両立を実現する景観の設計手法を考察するために、慰霊碑などが多く配置されている公共緑地空間の事例としてDCワシントンのナショナルモールを取り上げ、この景観の展開を図式化する方法を考案し、それを用いた景観展開の分析を行った。以上の成果は1)を一冊の著書に、2〜4を平成19年度日本造園学会関西支部大会における計4件の口頭発表として公表した。なお、1の著書は平成20年度日本造園学会賞(研究論文部門)を受賞した。
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