本研究では、ユジノサハリンスクの市街地変容の特性として、日本時代初期に建設された豊原市街地の城下町的特質について、同様の性質を持つ札幌の初期市街地との比較に基づいて、その変容過程の違いを明らかにした。札幌ではすぐに消失した城下町的特質が豊原においては日本植民地時代の終焉まで維持されていたこと、それが豊原を接収したソ連軍幹部に「住宅の階級的格差」として報告されていたことなどを明らかにした。またサハリンにおける住宅建築およびミクロライオンの建設事業については、1960年代と80年代で大きな格差が認められる。集合住宅の大規模化とともに、建築の質的低下と共用オープンスペースの形骸化、コミュニティの分断下が顕著に認められる。
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