本研究は、建築材料として用いられた木材に注目して、その用法を具体的に把握することに主眼がある。そして、その知見をもとに、建築材料としての木材を、建築史の視座の中で体系的にとらえようと試みるものである。木材と伝統的な建物との関係には、それが選択された理由をはじめとして、どのように用いられてきたのか、また、建築材料としてどのように生産・流通していたのかなど、未検証な部分が多くのこる。この解明が、本研究の基盤である。本研究の実行過程は、次の4つの段階に分けることができる。すなわち、 A. 文献と遺構の調査による、伝統的建築における木材の使用状況の実態調査;近世の古文書を調査し、住宅関係の記載個所から、木材の使用状況を抽出・整理し検討する。 B. 史(資)料調査を主とする歴史的背景の分析;京都府及び周辺の遺構調査を行う。 C. 木材の生産・流通体制の分析;白鳥方歴代記の分析を進めるとともに、徳川林政史研究所所蔵文書などから、同様の近世の海運・湊の史(資)料を探索し、京都に搬入された木材の状況を調査・分析する。 D. 以上を体系的に整理、である。
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