本研究は、20世紀初頭のドイツ、オーストリアにおけるミュージアム建築計画を、その全体像と各論の両面から調査・考察するものである。本年度の課題は、「1.1900-1910年代を中心としたミュージアム建築計画の全体像の整理」と「2.ウィーン分離派館を中心とした展示建築に関するケーススタディー」の二点であり、初年度ということで、資料収集とその分析に重点を置いた。 1.ミュージアム建築計画の全体像を把握するために、まず国内において入手可能な関連資料の取り寄せと読み込みを進め、夏期の現地調査では、ウィーン、ミュンヘンの公立図書館にて包括的な資料収集を行った。また、同時代に建設されたミュージアム建築の主要例をウィーン、シュトゥットガルト、マンハイム、ヴィースバーデンなどおもに南ドイツ諸都市に訪ね、建築を実地に観察し、写真撮影と関連資料の収集を行うことで、その展開過程の把握に努めた。現在は、各プロジェクトについてのデータ整理と分析を進めており、次年度以降の調査結果と合わせて、全体像の整理に考察を加えた成果を発表する予定である。 2.夏の現地調査において、ウィーン分離派館史料室を訪問し、史料調査を行った。建築家J.M.オルブリヒのオリジナル図面を閲覧・撮影するとともに、非公開のトップライト部分など、建築細部を観察した。また、オーストリア国立図書館等で関連資料の収集を行い、分離派館の成立過程とその背景について補足した。さらにダルムシュタットの芸術家コロニーの建築群を視察し、オルブリヒの展示建築の展開を考察した。これらの調査を通して、分離派館では建築の造形面と並んで、トップライトなど、展示のための技術的側面も建築史的重要性をもつことを再認識した。後者についてはこれまで十分に論じられておらず、まずは2008年度の日本建築学会大会で、同テーマに関連した発表を行う予定である。
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