本研究は、20世紀初頭のドイツ、オーストリアにおけるミュージアム建築計画を、その全体像と各論の両面から調査・考察するものである。二年目の本年度の課題は、「1. 1900-1910年代を中心としたミュージアム建築計画の全体像の整理 (継続調査) 」と「2. ミュンヘンのドイツ博物館に関するケーススタディー」の二点であった。 1. ミュージアム建築計画の全体像を把握するために、国内において入手可能な関連資料の取り寄せと読み込みを継続し、夏期のドイツ調査ではミュンヘンの公立図書館にて包括的な資料収集を実施した。また、対象とする時代に建設されたミュージアム建築の主要例をハレ、ライプツィヒ、ドレスデン、ニュルンベルクなど東・南ドイツ諸都市に訪ね、建築を実地に観察し、写真撮影と関連資料の収集を行った。現在は、各プロジェクトについてのデータ整理と分析を継続中で、最終年度の調査結果と合わせて、全体像の整理に考察を加えた成果を発表する予定である。 2. 夏のドイツ調査において、ドイツ博物館史料室を訪問し、史料調査を実施した。成立期の同博物館の管理報告書を閲覧し、写真や図面などの所蔵史料を複写した。あわせて建築を実地に観察し、史料との比較を行うことで、成立期のドイツ博物館についての復元的考察を進めた。調査の結果、ドイツ博物館の計画は、19世紀末の同じ建築家によるプロジェクトとの間で造形面では大きな変化が見られるものの、展示計画などでは連続性があることがわかった。この点に同プロジェクトの歴史的意義が指摘できると考えており、2009年夏の日本建築学会大会では同テーマについて発表を行う予定である。 3. 前年度のケーススタディーのテーマであった「ウィーン分離派館の成立とトップライト」については、2008年度日本建築学会大会で学術講演した。さらにその内容に加筆した論文を論文集に投稿し、現在出版準備中である。
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