研究概要 |
本研究は,ヨウ素が有機物の高分子化を促進させる効果に着目し,セルロースをはじめとするグルコース誘導体の炭素化にヨウ素処理を適用することによって,バイオマス資源からの新たな機能性炭素材料を創製することを目的とした。本年度は,これまでにデンプンのヨウ素不融化によって,2次的な賦活処理をすることなくミクロ多孔性炭素体が誘導できたことから,その細孔形成機構を分子構造が既知な種々の出発原料を用いて詳細に検討した。また,微生物由来のセルロース(ナタデココ)を用いて,炭素ファイバーの作製を試みた。 細孔形成機構の解明からは,細孔発達はヨウ素不融化処理時(~120℃)ではなく,400-600℃の温度域で生じることが判明した。細孔発達を示したグルコース誘導体では,ヨウ素処理時にI_3^-及びI_5^-の結合状態でヨウ素が取り込まれており,ある種の錯体を形成していることが示唆された。さらにいずれも平均細孔径が0.70nm,ミクロ孔表面積が700m^2/g程度の活性炭に一様に転換されたことから,炭素過程における錯体の熱分解機構は原料に依存せず類似していることが推測された。これに対して,分子骨格にN原子が含まれているものを不融化の出発原料とすると,炭素化収率は増加するものの非多孔性の炭素体に変換されるといった結果が得られた。 一方,ナタデココのヨウ素処理では,ミクロ孔性の炭素ナノファイバーが高収率で調製できた。このことから,有機物の高分子化によって炭素固定化率を上げながら(資源の有効利用),工業的付加価値の高い活性炭が容易に作製できるといった,新たな合成法を提示できた。
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