研究概要 |
本研究の目的は,ナノ・マイクロ単結晶を各種基板上に三次元デザイン化し,産業用デバイスとしての新機能を発現する複合基板を作製することである。特に,バイオミメティック(生物模倣)やバイオミネラリゼーション(生物無機物化)概念を導入した環境融合プロセスにより,微細構造制御した酸化物系結晶薄膜の作製に注力した。 はじめに,超はっ水/超親水デザインテンプレートの作製には,光触媒単結晶被覆法,CVD法および光リソグラフィー法を組み合わせた多段階プロセスを応用した。フラックス育成した光触媒ナノ結晶をコーティングすることで微細凹凸形状を形成した。その微細凹凸表面にさまざまな疎水性官能基を導入することで超はっ水表面の形成に成功した。その後,比較的低エネルギーの光照射により,超はっ水表面の疎水性官能基を光分解でき,超親水表面に改質できる技術を確立した。 次に,超音波噴霧熱分解法を応用し,上記超はっ水/超親水パターン化表面にマイクロミストを噴霧し,加熱することで,酸化タングステン(WO_3)系結晶薄膜の形成に成功した。ミスト着弾などの成膜条件を制御することで,リング状結晶積層構造を作製できた。この光触媒(タンタル酸塩系結晶)/WO_3系結晶薄膜複合層は,近紫外光照射によりクロミック特性を示すことが確認された。 最後に,次年度の立体配置制御した複酸化物結晶育成のための事前研究を実施し,きわめてユニークな形状をもつリン酸カルシウム球晶のゲル育成に成功した。この球晶はフレキシブルな超ロングウィスカーが複雑に絡み合った多孔質形状であり,ゲル育成条件により球晶形状を制御できることもわかった。次年度,この球晶の立体配置制御に関する研究に着手する。
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