研究概要 |
・転位形成のレーザー照射条件の探索 フェムト秒レーザー(Ifrit,パルス幅217fs,繰り返し周波数1kHz)を、Mg0単結晶内部にフェムト秒レーザーを集光照射した。集光には対物レンズ(NA=0.3,0.45,0.8,0.9)を用い、転位が明瞭に形成される集光条件を確認した。NA=0.9の対物レンズを使用し、Mg0(001)面に対して垂直方向からレーザーを照射したところ、クロス状のパターンが形成された。本パターンは、レーザーの影響を受けていない周囲と比較すると屈折率が変化しており、深さ方向においても同様のパターンが連続して観察された。つまり、結晶内部の特定結晶面が変化していることを示している。本パターンは、結晶面のあらゆる位置に照射しても、同じ大きさと形状を保持しながら形成されることを確認した。これは、Mg0結晶の力学的特性に強く依存しており、(110)面のすべり面に沿って転位線が発生していることに起因する。 透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて集光部の様子を観察すると、高密度に凝集した転位線が集光部とパターン領域の両方に形成していることを確認した。レーザーを照射することにより、集光部に高圧領域が形成され、結果としてひずみが印可される。次段階で、結晶内部において形成されたひずみが若干緩和され、その時に転位が発生したものと考えられる。レーザーにより形成される転位構造は、通常のインデンテーション法で形成する場合と全く異なる形状を示した。原因として、前者では、ひずみが表面の比較的広い部分に加えられるのに対し、後者では、ひずみが内部の局所領域に加えられるという違いが考えられる。単結晶表面に照射したところ、転位よりも亀裂が発生しやすいことを確認した。フェムト秒レーザーにより、結晶内部で転位を制御できることが示された。
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