本研究では、耐酸化性及び高温強度特性に優れた被覆層をカーボンナノファイバー等の様々なカーボンナノ構造体にコーティングする手法を検討し、これらカーボンナノ構造体を添加することによるSiC/SiC複合材料の熱伝導率及び機械強度の改善のための作製方法を最適化することを目的としている。19年度は、カーボンナノチューブとSi粉末もしくはTi粉末の真空中熱処理という簡便な方法により、カーボンナノチューブ表面へSiC層の均一なコーティング及びTiC超微粒子を担持させることに成功した。また、被覆層をコーティングしていないカーボンナノファイバーを添加したSiC/SiC複合材料を、反応焼結法により作製した。カーボンナノファイバーを4vo1%程度添加することで、siC/SiC複合材料の熱伝導率が飛躍的に向上した。熱伝導率に及ぼす繊維の織り方について検討した結果、繊維織物に隙間が多い疎な織り方である平織り繊維を使用した場合、複合材料の熱伝導率のばらつきは小さく、すべての試料において飛躍的な熱伝導率の向上が見られた。一方、繊維織物に隙間が少ない密な織り方である朱子織繊維を使用した場合、複合材料の熱伝導率のばらつきが大きく、熱伝導率がほとんど向上しない試料も見られた。これは、繊維織物に隙間がない場合、高熱伝導率を持つカーボンナノファイバーが繊維織物間に入り込めず、繊維織物が熱障壁となり、熱伝導率が向上しない試料が存在した。一方、繊維織物に隙間があることで、そこにカーボンナノファイバーが入り込めたため、高熱伝導パスが形成され、複合材料の熱伝導率が向上したと考えられる。
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