本研究では、耐酸化性及び高温強度特性に優れた被覆層をカーボンナノファイバー(CNF)等の様々なカーボンナノ構造体にコーティングする手法を検討し、これらカーボンナノ構造体を添加することによるSiC/SiC複合材料の熱伝導率及び機械特性の改善のための作製方法を最適化することを目的としている。H20年度は、被覆層をコーティングしていないCNFを添加したSiC/SiC複合材料を化学蒸気浸透(CVI)法及びポリマー含浸焼成(PIP)法により作製し、複合材料の熱伝導率及び機械特性に及ぼすCNF添加の影響を検討した。複合材料の熱伝導率及び機械特性に及ぼすCNF添加量依存性を検討するために、2%及び5%CNFを添加した試料を、それぞれ作製した。その結果、CVI法により作製された複合材料では、CNF添加量が増加すると共に機械強度及び弾性率が減少したが、破壊エネルギーは増加した。一方、PIP法により作製された複合材料では、CNF添加試料と無添加試料との間で、機械特性の大きな変化は観察されなかった。これは、CVI法により作製された試料では、CNFを添加することで、CNF-マトリックス間界面において、強度試験時にマイクロクラックが生じたためではないかと推察される。一方、PIP法により作製された試料のマトリックスは、CNFを添加しない場合においても脆いため、CNFを添加しても機械強度が大きく変化しなかったものと考えられる。また、CVI法及びPIP法で作製されたどちらの試料においても、強度試験後の破面観察の結果、SiC長繊維だけでなく、CNFの引き抜けが観察された。CNFを添加することで、CVI法及びPIP法で作製されたどちらの複合材料の熱伝導率も向上した。これは、CNFを添加することで、複合材料内に残存する気孔の形状が、平板形状から球状形状に変化したためだと推察される。
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