硬組織(骨)代替インプラントを体内に埋入した場合、繰り返し負荷等による破断および骨と金属製バイオマテリアルとの弾性率の相違による骨吸収あるいは骨の薄化などの不具合が報告されており、最悪の場合、再手術を余儀なくされる。本研究では、Tiより優れた生体親和性を示すと共に、弾性率がTiより数GPa低いジルコニウム(Zr)に着目し、力学的特性のバランスに優れ高生体親和性を有する新規なベースバイオマテリアル(基盤生体材料)の創出を目的とした。 Nb含有量の増加に伴い、Zr-XNb系合金の引張強さは線形的に増加したが、伸びは逆の傾向を示した。この中で、Zr-20mass%Nb合金は、それぞれ約480MPaおよび約16%の引張強さおよび伸びを示し、他のZr-XNb系合金と比較してやや良好な強度・延性バランスを示していた。同合金のヤング率は、他のZr-XNb系合金と比較して最も低い値(約58GPa)を示していた。また、その疲労限は、約400MPaであった。この場合、既存の生体用チタン合金の引張強さおよび疲労限と比較してやや低い値であったが、溶体化時効処理などの熱処理による析出強化や他のβ安定化元素の添加による固溶強化等により、強度を改善することが可能であると考えられる。細胞毒性に関しては、全てのZr-XNb系合金において、4日培養後の細胞数が2倍以上に増殖しており、Nb含有量の変化に対する細胞毒性の有意な差は認められなかった。日本白色家兎の大腿骨にZr-XNb系合金を埋め込んだ場合、Nb含有量の増加に伴い、骨融合性(異種材料と骨組織との化学的結合 : オステオインテグレーション)が向上する。この場合、5から10mass%Nbの含有量を境に骨融合性が著しく変化していた。この結果より、合金化によって骨融合性を制御できる可能性が示唆された。
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