本研究では、酸素イオン-電子混合導電性セラミックスの酸素イオンの輸送経路の制御によって酸素透過性能の向上を見出す。これより、800℃以下の比較的低温で部分酸化改質に応用できる酸素透過セラミックスを実現する。平成19年度は、結晶異方性をもち、かつ、高い酸素透過性能をもつ混合導電性酸化物を探索することからはじめ、単結晶作製を行い、酸素イオン導電性をつかさどる酸素イオン欠損構造の異方性を検討した。具体的には、(1)斜方晶Sr-Fe系酸化物及び(2)正方晶層状ペロブスカイトSr-Fe-Co系酸化物のそれぞれについて、静置徐冷法、フローティングゾーン(FZ)法にて単結晶育成を行った。Sr-Fe系酸化物においては、中性子回折に耐えうる大きさ約3mm角の単結晶を得た。この試料について、茨城県那珂郡東海村、東京大学物性研究所の共同中性子科学研究施設内に設置された4軸回折計(FONDER)にて、単結晶中性子回折を行い、酸素欠損構造を解析した。その結果によれば、斜方晶のSrFeO_<2.75+δ>では、a-c面内で酸素欠損が起こりやすく、また酸素イオンの等方性熱振動パラメータが通常の場合に比べて、約2-3倍高い。このことは、他の方向に比べ、a-c面内で酸素イオンが動きやすいことを示している。すなわちSrFeO_<2.75+δ>の酸素イオン輸送経路が異方的であり、その経路制御によって酸素透過性能が上昇しうると考えることができる。
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