平成20年度は、主に有機溶媒+水、水溶性ゲスト分子水溶液に水素分子を加えて、水素を含む混合ガスからなるクラスレートハイドレート、セミクラスレートハイドレートの高圧相平衡測定、ラマン分光分析を行った。 クラスレートハイドレートでは、窒素、フラン、テトラヒドロチオフェンを用いて水素包接性の研究を行った。すでに平成19年度の結果で、立方晶の構造I型と構造II型間で水素包接能力に違いが見られることを見いだしており、本年度も昨年度の結果を支持する研究成果が得られた。しかしながら、同じ構造II型であっても、ゲスト分子によって、水素取収速度に顕著な差が見られたことから、僅かなハイドレート構造の歪みや、ゲスト分子がもつ物理化学的性質が水素の吸収速度に影響を与えることが示唆される。 セミクラスレートハイドレートでは、第4級アンモニウム塩やアミンを用いて研究を行った。水素加圧下で水溶液からセミクラスレートを調製した場合、水素が小さい籠のみに包接され、高圧力域では、水素が包接される小さい籠の数がより多い構造に相転移することを明らかにした。一方、あらかじめ調製したセミクラスレートに、後から水素を加圧した場合、低圧力域では水素が吸収されず、40MPa以上の高圧力が必要であることを見いだした。 このように各結晶構造における水素包接能力・速度、には、ハイドレート結晶内の水素分子の拡散性に起因すると思われる相違点が存在し、ハイドレートの結晶構造の選定がハイドレートを利用した水素貯蔵において重要な要因の一つとなりうることを明らかにした。以上の研究成果を5報の論文にまとめ、すでに3報が掲載、2報が審査・投稿準備中である。
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