単一応力発光ナノ粒子に焦点を当て、19年度に開発した光検出器付きAFMシステムを用いて、発光特性を検討した。得られた情報は、世界初の知見であり、目的とする【ナノ・マイクロ領域における動的応力診断ツール】の根幹として、大きな意味を持つ。具体的な研究結果の詳細((1)〜(5))を以下に記す。 (1)SAOEマイクロ粒子(1-5μm)の印加応力限界値 10μN程度の外力で粉砕される一方、サイズが50nm以下になると粉砕されない。 (2)SAOEナノ粒子(10nm〜)の印加応力限界値 ナノ粒子では、カンチレバーが破損しない上限値40μNでも、粒子の破壊、変形は観測されなかった。事前のTEM、XRD測定より、SAOEナノ粒子が単一の結晶であることを確認している。これより、ナノ粒子の強度は単一の結晶状態に由来し、一方マイクロ粒子はナノ粒子の二次粒子であるため比較的破砕され易いと考えている。結果を鑑みて、発光特性評価では、マイクロ粒子でも破砕しない10μN以下で行なった。 (3)単一ナノ粒子からの応力発光検出に成功。 外力を印加(0.03Hz)し、印加信号、光電子増倍管の検出信号を同期して取り込むことで、印加信号に対応した発光信号を観測することに成功した。 (4)発光信号と印加周波数。 外力を印加の周波数を0.03-0.59Hzと変化せても、印加信号に対応した発光信号が得られることを見出した。 (4)応力発光強度定量化の計測システム・評価プロトコルの設定。 一定時間(20秒)外力(0-10μN)を印加(0.59Hz)し、フォトンカウンティングを行なうことで、発光強度の定量化を試みた。その結果、同一粒子、もしくは同じサイズのナノ粒子に、同条件で応力印加を行なうと、同程度の発光が得られることを確認した。 (5)発光の印加応力依存性。 (4)開発の計測システム・評価プロトコルに従って、印加応力を0-10μNまで変化させると、例え1粒からの応力発光であっても、発光強度が比例的に増大することを、世界で初めて明らかにした。
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