研究概要 |
スパッタプロセスは, 非常に幅広い薄膜プロセスに用いられている. 本研究では, 高機能薄膜を高品質に形成するためには, 多元素スパッタプロセスにおける気相中の数種類の金属原子密度を同時モニタリングするための吸収分光用光源の開発し, その光源を用いて実スパッタプロセスの気相診断技術の確立を目的としている. 前年度は, 複数の金属原子密度を同時モニタリングするための光源を開発し, 金属原子の絶対密度計測に成功した. 本年度は, 透明導電膜Indium-zinc-oxcide(IZO)膜の製膜と, スパッタプロセス中のInとZn原子密度の同時モニタリングを行い, 反応過程の解明を目指した. (1)マイクロホローカソード光源の安定性調査 本吸収分光用光源の発光強度及び光源の温度安定性の調査を行った. 光源の点灯時間とともに発光強度は小さくなる一方で光源の温度は上昇した. また, パルス放電及び放電ガスを流し続けて放電を行った結果, 共に発光強度の低下を抑えることができた. このことから, 光源の発光強度はプラズマのガス温度の影響が大きいことが示唆された. (2)IZOスパッタ装置での吸収分光計測 主に有機ELディスプレイ用の透明電極として期待されているIZO膜薄膜スパッタプロセスにおいて, In及びZn原子の絶対密度同時測定を行った. その結果, 本実験条件では, RF電力あるいは圧力を大きくするにつれてそれぞれの原子密度は増加し, 10^9-10^<10>cm^<-3>であることがわかった. また, In及びZn原子密度の比率は, ほぼスパッタターゲットの含有量に等しいことが明らかにされた. (3)IZOスパッタの気相・薄膜表面反応過程の解明 IZO薄膜を製作したところ, 可視光領域である波長400-800nmの領域で光透過率85%以上, 比抵抗10^<-4>-10^<-5>cm・Ωの特性を得た. また, In及びZn原子密度が低い条件で高品質の薄膜が製膜できることが示唆された.
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